新生児マススクリーニングは全新生児が受け、タンデムマス(MS/MS)で数十種の代謝物を測る。しかし判定は今も分析物ごとの固定カットオフで、感度を確保するため広めに引かれ、多くの健常児が「陽性」として呼び戻される(リコール)。偽陽性は親の強い不安と再採血・精密検査の負担を生む。代謝物は経路でつながり、比とパターンに病態が表れるのに、その構造はほとんど判定に使われていない。プロファイル全体から病態を読めるか、が問い。
40種規模の代謝物+臨床変数(在胎週数・出生体重・採血日齢・経腸栄養)を、代謝経路の構造を踏まえた表現学習+較正(キャリブレーション)にかければ、(1)感度を落とさず偽陽性リコールを大幅に減らし、(2)二値フラグでなく疾患別の較正済み事後確率を返し、(3)欧米データでなく日本人集団のカットオフで較正できる、と仮説する。先行のランダムフォレストは個別疾患の偽陽性削減を示したが、全分析物を経路で統合し較正確率まで返す公開研究は日本でほぼ無い——ここに新規性がある。
真の患者は数万人に1人で極端な不均衡、信号は単一マーカーでなく多数の比の同時パターンにある。固定カットオフや単変量解析では捉えられず、不均衡・縦断・装置差(一次のFIA-MS/MS ↔ 二次のLC-MS/MS)を一体で扱える機械学習が要る。ヒトが手で引く閾値の限界を超えるのがAIの必然で、しかも確率を較正して返すことで臨床判断に接地する。
偽陽性リコールが減れば親の不安と医療負担が直接下がる。アウトプットは(1)日本人較正の較正済み判定モデル、(2)二次検査の前に確率で優先度を付ける運用、(3)将来は対象疾患の拡大候補や非典型パターンの発見。スクリーニングは公衆衛生事業なので自治体・検査機関との連携で社会実装。Hiroは先天代謝異常・タンデムマスを学ぶ医学生=当事者で、臨床経路とドメインに通じる。