2024年のLancet認知症委員会は、修正可能な14因子で全認知症の約45%が予防可能とし、その中で難聴を中年期以降で最大の単一リスク(約7%)に位置づけた。しかし臨床の聴覚評価は純音聴力図(周波数×dBの数点)に切り詰められ、雑音下の語音明瞭度・時間分解能・中枢聴覚処理という「実際の会話で困る聞こえ」は測られない。純音が正常でも会話に困る"隠れ難聴(hidden hearing loss)"を拾えないのが課題。
純音+雑音下語音+OAE+自記オージオ+時間処理課題を統合した「機能的聴覚プロファイル」を表現学習で一つの潜在空間に写像すると、純音だけでは見えない聞こえの"型"が立ち上がり、その後の認知機能低下・社会的孤立・転倒を予測できる、という仮説。数個の閾値でなく多モーダル・縦断のプロファイルとして扱う点が新規。新生児聴覚スクリーニング(#73)とは対象が、脳年齢(#23)・分子イメージング(#103)とは入口が異なる。
多モーダルで個人内変動が大きく非線形な聴覚データを、数個の閾値でなく高次元の潜在表現として捉え、縦断の認知・転倒アウトカムに接地するには、表現学習+時系列モデルが要る。単純な集計やPTA1値では「会話の困りごと」と「将来の認知低下」は結べない。
健診・かかりつけに組み込める短時間の機能的聴覚チェックと、補聴器適合・語音リハの入口最適化。日本の超高齢社会での認知症・フレイル予防の一次データになる。聴覚は「測って・介入できる」数少ない修正可能リスクで、出口(補聴・リハ)が既にある点が強い。